ビーチコーミングをはじめよう!

 

「ビーチコーミング」ということばを知ってやってみたくなり、近所の海岸にお父さんといっしょにやってきたアンちゃん。

アンちゃん

「わっ!大変!浜べにたおれてうずくまってる人がいるよ!だいじょうぶですかー!」

「あれ?具合が悪いんじゃないみたい。 おじさん何をしているんですか?」

この時、アンちゃんが声をかけたおじさんの正体は…

佐々木さん

 

幼少期に貝の魅力にとりつかれビーチコーミングを始めた。漁協職員として貝類に関わる一方、この道50年のエキスパートであり、益田の海岸のビーチコーミングの第一人者である。

アンダンテ21の副理事長も務める。

佐々木さん「貝がらをひろっているんだよ。よく倒れている人と間違えられてしまうんだけどね。」

アンちゃん「わたしも貝をひろいに来たの。でも、なんで砂浜にはいつくばっているんですか?それにここには貝はないし…」

佐々木さん「よくみてごらん。砂の上に小さな貝がらがたくさんあるんだよ。」

 

←浜辺に打ち上げられた小さな貝がらがたまっている、通称「貝ベルト」

アンちゃん「わー、ほんとだ!今まで小石だと思っていたけどいろんな種類の貝がらがあるね!」

佐々木さん「そう、すごくたくさんの種類があるんだよ。しかも海岸によっても拾えるものの種類が違うから、近所の海だけでも全部の種類を集めるのは気が遠くなるような作業だよ。だから、おじさんは、おじょうちゃんくらの歳からビーチコーミングをしているけど、50年間まったくあきずに続けているんだよ。」

アンちゃん「50年も!ビーチコーミングって、おくが深い世界なんですね~!」

 

こうして佐々木さんと出会ったアンちゃんは、ビーチコーミングの弟子入りをすることにしました。

 

ビーチコーミングのポイント

「佐々木さん、わたしもビーチコーミングをはじめようと思うんだけど、まずいくつか教えてください。」

「まず、ビーチコーミングをするにはどこにいけばいいですか?」

「海べならどこでもできるのがビーチコーミングの良いところだよ。とりあえず、まずは家の近くの海岸などに行ってみればいいんじゃないかな。海岸によってよく拾えるものが違うから、いろんなところに行ってみるのも面白いと思うよ。自分のヒミツの場所を探すのが楽しみでもあるしね。」

アンちゃん 「うーん、でも海は広すぎてどんな場所が良いのかわからないな…」

佐々木さん 「じゃあ、ちょっとヒントを教えてあげよう。」

佐々木さん 「こんな風に、砂つぶが小さく波のおだやかな砂浜は、小さな貝がよく拾えてビーチコーミング入門にはもってこいです。波の高い海岸では、小さな貝がらはこわれてしまうからね。 こういう砂浜は、両側に岬があって入り江になっていたり、沖に防波堤(ぼうはてい)やテトラポットが入っている場所に多い。」

アンちゃん 「夏に泳ぎにいくような感じだね。」

佐々木さん 「こういう浜は、波が弱くて遠浅の場所が多いので、夏には海水浴場になっていることもよくあるね。益田では、小浜、津田、土田などかな。」

 

佐々木さん 「次は、こんな風に小石がごろごろしている海岸や磯場。こういう場所は、外海に面していることが多くて波も強いので、人工物など大きいものが漂着していることがあるよ。岩場にすむタカラガイのような貝の貝がらも拾いやすいね。」

アンちゃん「だけど危なそうね…」

佐々木さん「そう、外海に面したポイントは波が高くなりやすく危険。とくに岩場があるような場所はすべりやすいのでとても危ないです。スパイクをはいたりしっかり装備をして、海のおだやかな日に大人の人と行こうね。」

 

佐々木さん「さらに、広い海岸のなかでも、貝殻や漂着物が溜まりやすい場所があるよ。波が集まりやすいところだね。どんなところに漂着物が多いか、拾いながら地形を見て考えたら、そのうち分かってくるよ。」

 

ビーチコーミングの服装と持ち物

「じっさいにビーチコーミングにいくときは、どんなものを持っていったらいいですか?」

「手ぶらでもできるのも、ビーチコーミングのいいところ。でも、持っておくといいものや、服装などを教えよう。」

佐々木さん 「ひろった貝や漂着物は、バケツやポケットに入れておいてもいいけど、小さな貝やサクラガイのようなうすい貝殻は持ち運んでいるあいだにこわれやすい。タッパやチャック付きビニール袋などに小分けにしておくといいかもね。ちいさなものを拾うには、ピンセットがあると便利だね。アンちゃんは若いから目が良いと思うけど、虫メガネがあると見つけやすいね。」

アンちゃん 「ほんとうに、簡単なものでいいんですね。高い釣り竿を買うわたしのお父さんと大違い!」

佐々木さん 「釣りはお金がかかるけど、おなじ海辺でもビーチコーミングはタダでできるしゅみだからね。」

佐々木さん 「服装はもなんでもいいけど、靴は長靴が濡れなくていいかな。すべりやすい場所では、フェルトがついているものがいいね。日射しがつよい時にはぼうし、長袖の服を忘れないようにね。」

佐々木さん「ひろった貝をしらべるための図鑑なども現地に持って行ってもいいし、おうちに持って帰ってから調べてもいい。池田等先生の【海辺で拾える貝ハンドブック】などはおすすめです。」

 

ビーチコーミングの季節と好条件

「ビーチコーミングに良い季節はいつですか? 」

「ビーチコーミングは、季節によって拾いやすい種類のものがあるよ。だから四季を通して通ってみると、海の一年が見えてくると思うよ。」

アンちゃん 「なるほど! どんな日に行けば、たくさん拾えるのかな?」

佐々木さん 「ビーチコーミングの好条件は、海が荒れておさまった直後だね。波が高い日は、多くの漂着物が海岸に打ち寄せられるので、それが収まった後だとたくさんのものが海岸におちている可能性が高いです。波がおだやかな日が続く夏場なんかは、台風一過の日にいくといいかもね。」

アンちゃん 「海が荒れた日がいいんですか?危なそうね。」

佐々木さん 「海が荒れた日じゃなくて、荒れが治まった後だよ。波が高い時化の日に海岸に行っても、波足が長いので拾いにくいし、何しろ危ない。だから、海が荒れている最中には絶対に海に近づいてはいけないよ。」

 

家でもできる!?ビーチコーミング

「海があれた日は、ビーチコーミングはできないのね。残念だな。」

「ビーチコーミングはおうちでもできるんだよ。」

佐々木さん 「わしは、悪天候で外に行けない日は、集めておいた小さな貝(微小貝)の選別を家でしているよ。小さな貝は外ではなかなか選別できないから、まとめて持って帰って家でじっくり見ています。」

アンちゃん 「え~!おうちでまで貝をさがしてるんですね!」

佐々木さん 「ここまでくると完全にマニアの世界だけど、拾ったものを使って工作などをしてもおもしろいんじゃないかな。アンちゃんも、益田でビーチコーミングをしているとそのうちそっちの先生にも出会えると思うよ…」

 

ビーチコーミングの注意点

「ビーチコーミングで気を付けないといけないことを教えてください。」

「海辺というのは危険がつきものです。さっきも言ったけど、海が荒れているときには絶対に近づかないようにしようね。天候の急変にも注意してね。すべりやすい岩場など危険な場所にも行かないようにしよう。もちろん、海辺にいくときは大人の人といっしょにね。」

佐々木さん 「海におちているものの中には、毒針をもった生き物の死がいや、注射針や薬品などあぶないものもあるので、そういうものは手に取らないようにしようね。」

佐々木さん 「それと大事なことがひとつ。海には、漁業権(ぎょぎょうけん)といって、漁師さんだけが貝やウニなどをとれる権利があります。だからビーチコーミングでひろって持って帰るのは、貝がらだけにしようね。中身のある貝をもってかえったら密漁になってしまうよ。」

アンちゃん 「気をつけないと大変なことになりますね。」

佐々木さん 「以上のことを守ってくれると約束できるかな?」

アンちゃん 「はーい!」

佐々木さん 「じゃあ、わしと貝をひろいにいってみよう。」