保存方法
作成:2017/09/30
更新:2018/03/26
<はじめに>
ワサビは高級食材です。余ったら捨てずに大切に保存しましょう。まずは本手順にて冷蔵を試みます。植物界最強の抗菌作用があるからなのか、表面は黒くなっても内部まで及ばないことが多く、けっこう長く保管できます。冷凍は、大量に余ったり、長期間使用しない場合に試みましょう。
<冷蔵保存>
私の師匠、あるベテランのワサビ農家は、ひげ根に関してこう指摘しています。
- 一般に植物は根を取り除くと死滅してしまうか、急速に弱って鮮度を失うものだ。だからワサビのひげ根は食べる直前まで取り除いてはならない。
実際私の経験では、ひげ根付きワサビが野菜室で1年以上生き、新芽を出し続けていた実績があります(右写真参照)。つまり「ひげ根付き」は「泥付き」牛蒡の様なもの、鮮度に大きな影響を与えるものと考えられるのです。一方で農協の出荷規格は以下の通り、本仮説に反します。
- ひげ根を全て除去して洗浄、ネットの上に並べて、およそ一晩自然乾燥する。
この農協式は、加食部分の重量が公正に測れること、乾燥により茎が腐りにくいという美観上のメリットがあるものの、鮮度を損なう可能性は、農家として不本意なところです。この他に文献には「濡れた新聞紙に包む」、あるいは「水に漬ける」等の提案していることがありますが、これら保存方法に合理性があるのかは疑問が残ります。というのも、多くの酸素を必要とするワサビが、酸欠してしまうと推測できるからです。
写真左:根茎を水に濡らしたキッチン・ペーパーや新聞紙でくるみ、その上からラップをする。
写真右:グラスに水を七分目ほど入れ、その中に根茎を入れて冷蔵庫に入れる。水は毎日取り替える。
そこで様々な研究を続けました。しかしながら、ワサビの冷蔵保存について科学的実証、エビデンスは発見できませんでした。また、保存技術の研究機関である農産物流通技術研究会(千葉大学・椎名氏)に照会しても「CiNiiで和文誌を検索してみましたがヒットはありません。」との回答しか得られませんでした(2017/01/18)。よって以下は、私の頼りない経験則により、現時点でベストと思われる方法の紹介になります。正直、どなたか詳しく研究して頂きたいものです。
- なるべく「ひげ根付」のワサビを購入する。その際、ひげ根は除去しない。
- ラップをせず、ストックバック等に空気と一緒に入れ、湿度が逃げない様に密閉する。
- 他の食材に圧迫されない様に、冷蔵庫に保管する。
※野菜室、冷蔵、チルド、どこの保管場所でも構いません。より低温の方が長持ちしますが、凍結は避けて下さい。
※完全密封、常に機密性を保って下さい。袋が開いていると乾燥して直ちに死滅することがあります。
※大根の様に「立てて保管」まで気を使う必要は無いと考えています。自然界では横になっているワサビだらけなので。
※約1か月は持ちますが、風味が徐々に損なわれていくので、2~3週間以内にご賞味することをお勧めします。
<冷凍保存>
前述の通り原則は冷蔵で、どうしても冷凍が必要な場合は、本手順にて急速冷凍してください。尚凍結を施しても、緩やかながら、辛味や香味成分がラップを通り抜けて揮発してしまいます。密閉を徹底して3か月程度で食べ切る様にして下さい。
- 余ったワサビを全部すりおろす。
- わさびをラップに移し、薄く伸ばす。
- さらにストックバックや密閉容器に容れて冷凍する。
※揮発防止するため要完全密封です。 - 使う時は、必要な分だけ割り、再び冷凍庫へ戻す。
因みに、根茎まるごとの冷凍は以下理由によりご法度です。瞬間冷凍をはじめ、プロトン、CAS(Cells Alive System)凍結でも、結果は同じです。因みにフリーズ・ドライの場合は、何故か苦味が極端に強調されます。
- 冷凍のまますりおろすと、低温度により酵素ミロシナーゼの活性が失われる。要は不味くなる。
- 冷凍のまますりおろすと、鮫皮の場合は表面を痛めてしまう。
- 解凍してからおろすと、腰が無く柔らか過ぎて、上手にすりおろせない。
<参考文献>
- 農文協「ワサビ―栽培から加工・売り方まで」星谷佳功著