根茎のおろし方

作成:2013/05/05

更新:2017/11/21

 

以下、「オーベルジュわさび流」根茎のおろし方を紹介します。一般的な流儀と一部異なりますので、必要に応じて、そして気分に応じて、各自適宜手を抜いてください。美味しいと感じるのが一番ですから。

 

♪厨房で下ごしらえ♪

※ヒゲ根が取り除かれたワサビは、以下の手順1~2を省いて下さい。

  1. ワサビに絡みついた泥や砂を、流水と手で大雑把に取り除く。
  2. ヒゲ根の根元を指先でつまみ、手首を捻りながらむしり取る。
    ※太い根は捨てずに、みじん切にして海苔の佃煮や味噌等に混ぜるとGood!
  3. 流水とタワシで、ワサビについた砂や泥を完全に取り除く。
  4. 小さい包丁を使い、黒い部分(墨ないし黒墨と呼ばれる)等を大雑把に削り取る。
    ※墨は風味を損ねますが、無農薬の証拠です。多少残っていても無害です。
    ※根茎の先端に墨が多くある場合は、先端ごと切り取って下さい。
    ※皮やコブの部分に辛味や多くの風味がありますので、削り過ぎないで下さい。
    ※茎が長すぎる場合は、適宜切って短く整形してください。
    ※茎の先端が黒くなっているのが気になる場合は、うすく削いで取って下さい。
  5. キッチンペーパー等で、表面の水分とワサビの削りかすを取り除く。

 

♪食卓で小まめに♪

おろし直後は苦味があり、辛味や風味に乏しくなります。というのも、細胞を破壊して初めて酵素が苦味に働き、辛み成分や風味に変わるからです。3分後がその作用のピーク。なので、必要な時に必要な分量だけ「こまめに」すりおろしてく下さい。

  1. ワサビに適した目の細かいおろし器を使って、ワサビをゆっくり、円を描く様にすりおろす。
    ※「オーベルジュわさび流」は茎と反対側、下からおろします(※1)。
    ※コブの部分は割れやすいので、ワサビを斜めに傾けるなど適宜工夫してください。
    ※鮫皮おろしの場合、力を抜く方向に注意して下さい(※2)。
  2. すりおろしたワサビを小皿等に移します。さあ召し上がれ!
    ※小皿に移さず、ローテーションしながら、おろし器から直接とっても可(※3)。
    ※大き目の茎を1本むしりとり、スクレーパー(ワサビをとりわける匙)代わりにすると便利(※4)。
    本物のワサビは醤油と混ぜると、風味が極端に損なわれます。刺身に添える場合は刺身の下側に醤油、上側にワサビを添えると良いでしょう
  3. 余った根茎や茎は別紙資料を参照して保存しましょう。茎は微塵切りにして、刺身はもちろんのこと、豆腐や納豆の薬味にすると良いでしょう。きっとシャキシャキとした食感が楽しめますよ。 

 

♪上級者の小技♪

(※1)茎と反対側、下からおろします

「茎側からおろす」という一般的な流儀に従わないのは、以下3点のメリットを重視するからです。

  1. ビジュアル的に植物らしく、ワサビらしさを演出できる。要は「美味しそう」である。
  2. 生長点を残すことにより、美味しいワサビに出逢った場合、その子孫(DNA)を残すことができる。
  3. 生長点を残すことにより、残ったワサビを保存する際に鮮度をより長く保てると考える(推測する)。

 


 (※2)鮫皮おろしの場合

鱗の名残なのでしょうか、鮫皮には方向性があります。つまり、頭から尾の方向は滑らかで、その逆には抵抗があるのです。木版画の世界では以下の様な記述もあり、この方向性を厳密に利用しています。

鮫皮の表面は、角質化した皮膚が鋭い突起状の「とげ」の様になっています。この「とげ」にブラシの毛先を擦り付ける事で毛先の先端が枝分かれして、柔らかく使いやすい状態になってくるのです。「とげ」には、角度があって頭部から尻尾にかけて滑らかな状態になっていますが、刷毛おろしをするには「とげ」の流れの逆方向に擦ります。

そして鮫皮でおろす場合、「とげ」の流れの方向のときは力を抜き、ワサビが水っぽくならない様にしましょう。また、円運動は右廻り左廻り両方で、偏らない様に心掛けましょう。鮫皮を長持ちさせることができます。


(※3)おろしローテーション

ワサビはおろし器の中央でおろし、おろした後のワサビは、時間差で四隅に仮り置きします。その際「時計廻り」、つまり①→④の順にとします。また、ワサビを使う順番も同じく時計廻りとし「先入先出方式」を徹底しましょう。具体的には以下の流れを順次繰り返す手順になります。おろしてから1~3分で食べきることが理想です。

  1. まず最初に、おろしたら①の位置に
  2. 暫く経って、おろしたら②の位置に
  3. さらに後に、おろしたら③の位置に
  4. ①を食べたら、おろして④の位置に

因みに、大きなおろし器でないと、この技は使えませんので、悪しからず。次のグラフを参考に「おちょこ」を利用するのも賢いかもしれません。

(※4)ワサビ茎スクレーパー

写真の様に茎を取り外し、スクレーパー代わりに使うことができます。専用の刷毛や竹製などには若干劣りますが、ワサビを綺麗に取り出すことができます。鮫皮の表面が摩耗することもありません。

 

 

動画マニュアルを準備中(以下は本コンテンツとは無関係です)

 以下2点は根拠の無い独自研究の記事と考えられます。ボールドxイタリック字体部分は明らかに誤りと思われるので、注意してください。

 ●【日経トレンディネット】本当はクリーミーで甘い!? ワサビはひと手間と道具でプロ級の味わいになる!
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20150227/1062903/?rt=nocnt
>  生ワサビを使いたいけれど、辛味が強すぎるのは苦手という人は、

>  おろしたらすぐに陶器に移して3分ほどその状態で置いてください。

>  そうすると、甘みと風味が出てきますよ。

>  辛味成分であるからアリルからし油は、揮発性の成分なので、時間が経つほどに消えていくからです。

>  反対に辛味が好きな人は、食べる直前におろしましょう。

→辛味が苦手なら、「3分ほどその状態で置く」は逆効果。使う量を少なくすること。

→辛味が好きな人は、「食べる直前におろす」は逆効果。「おろしてから1~3分で食べきる」、或いは「贅沢に使う量を多くする」。

●【雑学の駅】すりおろしスピードが重要!ワサビの辛さを調節する方法

http://zatugakunoeki.com/food/7180/

わさびをすり下すスピードを速くするとそれだけわさびの細胞が破壊されて、この辛みの成分が外に出てきます
逆にすり下すスピードをゆっくりにするとわさびの細胞はあまり破壊されず、辛みの成分も抑えられるのです。

> 砂糖をほんの少しだけワサビに加えることで、辛みを引き立てることができます。

> ワサビには辛み成分のほかに苦み成分も含まれているのですが、砂糖を入れることでこの苦み成分が抑えられ、

> 辛みが引き立つのです。

→スピードの記述は全く逆。また速くおろすとイボ部分が欠けることが多く、貴重なワサビが無駄になることがある。

→砂糖添加の効果は現在調査中。浸透圧云々という記載が多いが、今のところ学術論文では発見できていない。ちなみに、少量の塩分を添加する場合は、酵素作業が活性化し辛味が増すというエビデンスは存在する。 

<参考文献>

  • ワサビをテーマ―にした飲食店「わさびん」オーナーシェフ濱平氏の熱い助言、2017年
    https://www.facebook.com/hamahira.innovative/
  • 日本美術家連盟版画家 本多廣美・版画館 木版用具取扱のページ、2017年9月30日閲
    http://www.hangakan.com/skill.html
  • 雁屋哲、美味しんぼ6巻 辛味の調和、1986年
  • 寺沢大介、将太の寿司 わさびの気持ち、マガジンSPECIAL連載、1992年
  • わさび博物誌 金印グループ創立75周年記念誌(2004年 非売品)
  • ミロシナーゼ活性に対する食塩の影響とアブラナ科野菜の漬物加工への応用
  • www.saltscience.or.jp/general_research/2011/2